『パラダイム』という言葉を聞くようになって久しいですね。日本語で表現すると、規制・認識の仕方・枠組み等として紹介されていますが、私は【思い込みの壁】と理解しています。人は、『こうなんだ!』と、思い込んでしまうとナカナカ柔軟に色々な視点から考えたり、見たりすることが難しくなります。特に、過去の成功体験からの脱却は・・・・・。
今日は、チェルノブイリの原発事故の記事からの紹介です。
ソ連の科学者のひとり、G・メドベージェフの内部告発には爆発直後、原発の技師たちがどのような行動をとったかが、描写されてあった。
技師たちは、何が起こったのか、懸命に考えようとした。原子炉は無事だと、信じて疑わなかった。何故か。設計から考え、原子炉が爆発するはずがないと思い込んでいたからだ。
それで、何が起こったかを見る為に、外に飛び出した。地一面を黒煙が覆っていた。放射線量機の針が振り切れてしまうほどの黒煙だ。『アスファルトの上に、何かが散らばっている。黒いものが分厚く積っている。しかし、それが原子炉から吹き飛んだ黒煙だとは思わなかった。機械室と同様に黒煙と燃料の真っ赤に焼けた断片が見えた。しかし、見たものが意味する恐るべき事実を受け入れようとはしなかった』
聡明で、よく訓練された技師たちは、原子炉爆発のまぎれもない証拠を見ながら、爆発を示すものは何もないと判断した。彼らの頭の中では、原子炉は無事だった。そう思い込んでいたからこそ、彼らは、人々に、そしてマスコミに原子炉は無事だと言いつづけた。
火を見るより明らかな証拠が、目の前にあった。それでも、自分たちの設計を信じて疑わなかったために、何が起こったかを示すデータを受け入れようとしなかった。
技師たちは、大量に被曝して死んだ。しかし、本当の死因は、自分たちのパラダイムから離れられず、事実を直視でなかったことにある。