《人間の覚悟》五木寛之 著

 今日は、以前読んだ五木寛之の《人間の覚悟》を取り上げてみたいと思います。
現代を『鬱の時代』とおっしゃる五木寛之さんのコメントを以下に書いてみます。

 混迷をきわめる政局、アメリカの金融危機に揺れる経済・・・・・。八百長問題に揺れる大相撲などのスポーツまで含め『すべてのカルチャー、時代が鬱の方向に向かっている』と考える。五木流の表現では、『テロは相手の見えない鬱の戦争。エコも鬱の経済学』。その一方で、鬱は『鬱蒼と茂る』という言葉のようにエネルギーにあふれており、《憂》《愁》などにつながる重要な感覚だとも語る。

 鬱の時代を生きる上でのキーワードとして挙げるのは『あきらめる』。五木さんはこれを『明らかに』『究める』、すなわち現実を勇気を持って直視することだと語る。そして、この大変な時代の中では、『どのように生きるか』よりも、まず『豚のようにでも生きる。生きていなければ話にならない』とも。それは終戦直後、日本に引き揚げた際に考えたことだ。
 『人を押しのけないと日本に帰れなかった。内地に帰ってきた人間は全員悪人だという覚悟もある。非常時には生きる為に悪人たらざるを得ないし、人間は大きな悪を抱えた存在であることが露呈する。その人が救われるか、という大きなテーマなんです』と語る五木さんは、そう言って笑顔を見せた。

 五木さんご自身、鬱を克服された経験があるようです。その時【喜びノート】【犠牲のノート】を付けていたそうです。【喜びノート】は、日々起きる些細な喜びを。【犠牲のノート】は、『あきらめる』ものを書き込みます。
 捨てたり・やめたり・あきらめることって、結構難しいことだと感じています。