職場の教養から二つ紹介します。
【口ひとつ耳ふたつ】
Mさんは朝から気が重く、心が晴れません。出社前の慌ただしい中、妻から長男の進路について相談されたことがきっかけでした。
気が急いていたため、妻の話を途中で遮り、要はこういうことだろと結論を出した時です。妻がなんとも言えない寂しげな顔で『あなたはいつもこうですね。結婚以来一度も私の話に耳を傾けてくれたことはない』と言ったのです。
そのまま家を出たものの、通勤途中でMさんは、入社時に上司に言われた言葉を思い出しました。『人間には口はひとつ、耳はふたつついている。しゃべることよりも聞くことに心せよ、という意味だ』
若い頃は、人の話をしっかり聞くようにしていたMさん。いつの間にか仕事に追われ(部下の言うことも、他のことをやりながら、真摯に聞いてなかったな。ましてや最愛の妻と、真面目に向き合ってこなかった)と反省したのです。
そして、(今日からいい聞き手になるよう努力しよう。相手の立場に立って耳を傾けよう)と心に決めたのです。
【そのままを聴く】
Aさんは人の話を聞くことが苦手です。特に、部下や年下の人の話には聞く耳を持てません。話の腰を折ることもしばしばで、建設的な話し合いにならず、なかなか周囲と調和を保つことができませんでした。
ある日、見かねた先輩が『君は、自分の意見や考えを差し挟まず、聴くことに集中するのが先決だ』と助言してくれました。たしかに、相手が話している最中から、次に話す内容を考えたり、反論することばかり考えていたのです。
『聴くことは相手を受け容れること』と諭されたAさん。まずは相手の話をそのまま聴くように努めました。
すると、相手の考えの特徴やその背景が見えてきたのです。(こんな細部まで考えていたのか) (よく準備をして意見を述べているな)と、相手を知り、理解できたことで、周囲との会話も増えていきました。
聴くことを通して、周囲と調和が図れるようになったAさん。現在は、家庭において、妻の話を聴くことに挑戦中です。