《マズローの欲求5段階説》

 読売新聞の編集手帳から

 人間の欲求には優先順位がある。米国の心理学者A・マズローは、かつてそんな“欲求段階説”を唱えた。

 生身の人間がまず追及するのは、食事や睡眠などの生理的欲求だ。二番目が安全欲求で、以下、社会に居場所を得たいという欲求(所属の欲求)、皆から認められたいという承認欲求などが続く。先の新語・流行語大賞の結果に、この学説を思い出した。

 大賞の『インスタ映え』は、画像共有サービス『インスタグラム』に由来する。投稿者は、見栄えのする風景といった『映える』写真をケータイから送り、見た人から
“いいね!”をもらうことを励みにするらしい。

 選には漏れたが、候補には『けものフレンズ』もエントリーされた。主人公は、事あるごとに“すっごーい!”と仲間に称賛される。そんなシーンが評判になったテレビアニメだ。いずれの言葉にも、人々の承認欲求が強くにじむ。

 マズロー流に言えば、仮に暮らしが安泰でも人間は満たされない。流行の背景には、【自分は正当に認められていない】という人々の不全感がありはしないか。閉塞感の漂う時代。だからこそ、互いの美点を認め合う余裕が欲しい。

※お金とか物による動機付けではなくて【承認欲求】を満たしてあげることが重要なのでしょうか!