『こうすれば組織は変えられる』 P・クライン著 より
筆者はかつて、ある執筆サークルに入っていた。そのサークルでは、書いたものをメンバーたちに読んで聞かせ、感想を書くという活動を行っていた。感想は作者が具体的に尋ねた点についてのみ述べ、作者の側に聞きたいことが具体的にない場合は、メンバーたちは作品について良いと思ったことだけをコメントすることになっていた。
ある時、九〇歳になる女性が自分の書いたエッセイを持ってきて読み上げた。それは実に拙ない文章で、小学四年生のレベルにも達していないものだった。それでも私たちはルールに従い、その作品の中からわずかながらでも褒められる点を見つけて指摘した。
この女性は毎週、新しい作品を携えてミーティングに参加し続けた。彼女の文章はグングン上達していき、ほんの一カ月で、私たちが彼女に作品の出版を勧めるレベルにまで到達したのである。残念ながら、それが実現する前に彼女は亡くなってしまったが、彼女の驚くべき成長は、私たちに、適切な励ましを受ければ、人はたとえ何歳であっても急速に新たな能力を発展させることができる、ということを証明してくれたのだ。