見たくなくても目に飛び込んできてしまう・・・そんな「見える化」の状態をつくり出すには、どうしたらよいだろうか。
たしかに、アンドンに代表されるような仕組み・仕掛けを工夫することは、きわめて重要である。トヨタにはアンドンだけでなく、「稲妻(いなずま)チャート」や「星取表」といった独自の「見える化」の仕掛けが存在し、そうした仕掛けをより効果的なもの、より利便(りべん)性の高いものにするためにITも活用されている。
では、「見える化」の仕組み・仕掛けを考案し、導入しさえすれば、「見える化」は定着するのだろうか。
残念ながら、仕組み・仕掛けだけでは実際に「見える化」は機能しない。
多くの場合、「見える」ようにするためには、「見せる」という意志や行動が必要となる。「火事場」理論のように、火の手という異常がいきなり目の前にあらわれることもあるが、企業活動においては、そうした異常や問題が露見する前に、小さな変化や予兆を暗示する事象(じしょう)や数字が必ずあるはずだ。それをつかみ、「見せる」ようにしなくてはならない。
「見える化」とは「見せる化」であり、「見せよう」という意志と知恵がなければ、「見える化」は実現できないのである。
そして、「見せよう」とする主体はあくまで「人」である。当たり前のことであるが、機械やIT自体には「見せよう」という意志はない。
真の「見える化」を実現するとは、「見せる化」を推進することであり、そのためには、「見せよう」とする「人づくり」こそが鍵なのである。