【依存】
集団思考における手抜きは、よく見受けるものです。何人かで話し合いをしていると、特に冴えた数人がアイデアを披露します。そうすると、その他の人々が彼らに依存してしまいます。これを防ぐ一つの方法は、個々のメンバーの個人的貢献や努力が、正当に識別・評価できるようにすることです。つまりアイデアの数を誰がどれだけ出したかを競ったり、一定時間でアイデアを出せないメンバーは辞退してもらうということです。
相互学習プロセスを破壊してしまうのは、メンバーの無自覚、依存です。みんなで対話するプロセスでの発見を期待しているのに、最初から「意見ありません」「わかりません」的な態度の人がいると、積極的な人の意欲まで削がれてしまいます。
【同調】
日本では長幼の序という思想があり、目上の人が言ったことには逆らわないという風潮があります。この風潮が日本人を討論はもちろん対話下手にしてしまっています。集団の中で大勢がある方向にまとまっていると、何となくそれに同調しないといけないような雰囲気ができてきます。これはあまりに多数決で何でも考えてきてしまった癖が抜けないからでしょうが、実に危険です。あるいは立場が上の人、ボス的な人がある意見や態度を表明していると、外のメンバーはその意見に同調しなければならないような感じになってしまいます。これは同調圧力と呼ばれますが、他の情報源からの情報を、自分の意見や判断の妥当性の根拠として受け入れる場合と、他の人の期待や反応をおもんばかる故に生まれてくるものとがあります。
【頑固】
逆転した権威主義、あるいは天の邪鬼とでもいうべきでしょうか。少数意見の少数であること自体に意味を見いだしてしまうものです。特に少数者の主張が一貫している、単に少数者の立場の反映には見えないこと、創造性を重んじる雰囲気があること等の条件下で発揮されやすくなります。創造的=少数意見と短絡してしまうタイプの人がこのような傾向をつくってしまいます。
【極化】
異なる意見のメンバーが話し合えば、極端な意見は中和され、全体としては中庸な結論が出るように思えます。けれども現実には、集団で話し合うと、個々人が考えているよりも、より極端な方向に結論が向かってしまうことが多くあります。これにはメンバーの持つ”志向”が強く影響します。もともとリスキー志向の強いメンバーが集まれば、よりリスキーになるし、保守志向のメンバーならば、より保守的な結論になってしまいます。つまり、それ以前の態度が、集団プロセスによって極端な方向に変容してしまうのです。
【団結】
勇敢なることを最優先にした旧日本軍では、敵の戦力のほうが圧倒的に強力であるというようなことが報告できなくなってしまいました。いつも「我が方が優勢なり」と報告しなければ、勇敢でないと思われてしまうからです。企業組織においても、課題を検討することよりも、メンバーが一致団結すること、メンバーの和のほうが優先されてしまうと、威勢よく意思はまとまるのですが、内容は空疎になってしまいます。
こういった集団思考が陥りやすい欠陥について、メンバーの方達が理解しあっていれば、それを回避することもできるはずです。