民主主義では、よりよい社会を目指し、対話を重ねながら社会やルールをつくっていくことに意義があります。具体的な完成型があるわけでも、正しいプロセスがあるわけでもありません。つまり、ありのままの現実を受け止め、いま置かれている状況の中で、自分たちの社会をどうすればよくできるのかを考えていけばいいのです。
もちろんいまの段階でも日本という国は制度的にみれば民主主義国家ですし、18歳から投票ができ、基本的人権や言論の自由も憲法で保障されています。こうした基本的なことすら実現していない国が多く存在していることを考えると、日本人は恵まれているとさえ言えます。
しかし、制度だけあっても肝心の主権者である国民が、「自分たちで社会をつくるんだ」という当事者意識を持っていなければ、本当の民主主義とは言えません。
かつてドイツでは、ヒトラー政権が国民の支持を得て、合法的に選ばれました。民主主義とは仕組みだけあっても、国民が成熟していなければ間違った方向に進んでしまう不安定で危うい側面があるのです。その成熟した国民を育むことができるは、唯一[教育の力]だけ。私はそう考えています。
子どもたちに民主主義を教えよう 工藤勇一著から