やり直しのきかない最も難しい人事がトップの承継である。それはギャンブルであ
る。トップとしての仕事ぶりは、トップをやらせてみなければわからない。トップへの準
備は、ほとんど行ないようがない。
しかし、行なってはならないことは簡単である。やめていく人のコピーを後継にす
えてはならない。やめていく人が「かつての自分のようだ」というのならば、コピーで
しかない。コピーは弱い。
また、十八年間トップに仕え、自身で決定したことが何もないという側近も注意し
たほうがよい。自分で決定する意欲と能力のある人が、補佐役としてそれほど長く留
まることはない。さらにまた、早くから後継と目されてきた人物も避けるべきである。
そういう人は、多くの場合、成果が必要とされ、評価され、失敗もおかしうる立場に身
をおくことのなかった人である。見た目はよいかもしれないが、成果をあげる人では
ない。
では、トップの承継にあたっての前向きな方法は何か。それは仕事に焦点を合わ
せることである。これから数年、何が最も大きな仕事になるか。次に、候補者がどの
ような成果をあげてきたかを見る。こうして組織としてのニーズと候補者の実績を合
わせればよい。
P・ドラッカー(「非営利組織の経営」)より