“面倒だから、しよう” 渡辺和子著より
【不幸の裏側に幸せを見つける】
私がアメリカで勉強していた時に聞いたお話です。
昔の修道院は電化されているところが限られており、まだトースターがない時代。ある修道院の料理当番の人が朝食のパンをオーブンで焼きました。片側を焼いてからひっくり返してもう片側を焼く。一度にたくさんのパンをオーブンで焼き、大皿に盛って食堂で待っている修道僧たちに出すわけです。
料理当番の人はいつも気を付けているのですが、ときたまうっかりしてトーストが黒焦げになってしまうことがありました。しかし、もったいないのでその黒焦げになったトーストも、そのまま大皿に盛って食堂へ持っていきました。
昔の修道院は沈黙していただくのがあたりまえでしたので、沈黙を守り、一枚ずつ上からトーストを取って次の人へお皿を渡していました。
一人の修道僧が『また黒焦げか』と、非常に不機嫌な顔をして自分に当たったトーストを取り、次の人に渡しました。次の修道僧もやはり黒焦げのトーストを自分の皿に取りましたが、その人はトーストを裏返しにして『あぁ、片側だけでよかった。ありがたかった』と言ったたそうです。
それはつまり、物事は裏返して見てごらんなさい、片側は真っ黒焦げかもしれないけれど、もう一方の側は黒焦げになっていないかもしれないということです。その時に『あぁ、片側だけでよかった。ありがたかった』という気持ちを持てることが、ある意味で『幸せになる秘訣』なのです。その心のゆとりが平安と幸せをもたらすのです。