私が気になるのは、「褒める」と「おだてる」の違いが分からない上司がいること。このふたつは似ているようで、まるで違うものです。
そもそも「褒める」というのは、相手のいいところを評価することです。つまり、きちんと部下を褒められる上司とは部下のよいところを発見できる上司のこと。これができない上司は、成功するどころか、上司としての役目を果たすことができません。
10点満点に対して「すごい」と言うのは「褒める」ことです。4点、5点を「すごい」と言うのは「おだてる」ことになります。能力のない部下を持ち上げているだけで、心の底からの賞賛ではありません。
おだてる上司の下にいる部下はどうなるのでしょう。能力もないのに「すごい」とおだてられて、つけあがり、10点満点中4点の能力しかないのに「これでいいや」と満足してしまいます。こうして「使えない部下」ができあがり、チームの戦力は伸びません。「使えない部下」の元凶は、おだてる上司なのです。
もし自分の未熟さを自覚している部下だったら、上司をバカにするようになるでしょう。10点満点で4点、5点しかないと自覚しているところを褒められたら、上司を見る目を疑います。そんな上司に従いたいと思う部下はいません。結果、やはりチームの戦力は伸びないまま。部下の本音に気づかない上司は、やはり「使えない部下」を生み出すことになります。
すごいところをすごいと言うのが「褒める」。そして、ダメなところをダメだと言うのが「叱る」です。「叱る」は「褒める」の正反対。それだけ分かっていれば十分です。
ちなみに「部下が失神するぐらい叱った」という逸話が残っているのは松下幸之助さんです。会社の存亡にかかわるようなミスなら、それぐらい厳しくもなるでしょう。また、それぐらいの情熱を持って部下に接するのが経営者であり、本当の上司なのです。