限られた人材の確保しかできない中小企業にとって、人材育成は大きな課題の一つだ。特に部署やチームの中心的存在となるリーダーが育つかどうかによって、売上拡大、業務効率改善、品質の向上など日々の業務に大きな影響が出てくるため、その育成は必要不可欠な課題となっている。
育成にあたって、まずすべきことは経営者の意識改革である。リーダーに期待するあまり、いつも注意してばかりだと育つものも育たない。部署やチームの部下たちがリーダーをリスペクトできるような雰囲気をつくり、経営者自身が伴走して育てていくという強い意識を持つことが必要になってくる。
具体的な育成のステップとしては、最初に期待するリーダーの役割と責任を明確にすることだ。「リーダーだから、現場をしっかりまとめてほしい」という抽象的なことではなく、労務管理、月次決済資料の作成、部下の評価の数値化など、期待する具体的ね業務内容を明確にする。そこに、求めるリーダーとしての具体的な資質、行動特性「先見性、リーダシップ、コミュニケーション力など」を加え、役割と責任を明示できるようにする。欧米の企業では、これらの内容をジョブ・ディスクリプション(職務記述書)として書面化していることが多く、国内の中小企業でも活用してみるといいだろう。
役割と責任を明確にした後は、リーダーの評価基準を整理する。実際、外部のリーダー研修やセミナーなどに参加している人からの「結局、どう評価されているかわからない」という声が多いのが現実。これはリーダーとして「何をどう評価する」という基準が設けられていない、もしくは設けられているとしたら上手く伝わっていないということに起因している。
評価基準まで定まれば、実際に教育対象者の能力の棚卸を行う。これによって、最初に明確にしたリーダー像(役割と責任)と、リーダーとして期待している人材とのギャップを洗い出す。
このギャップを埋めるのが育成である。教育対象者の能力の棚卸をした結果から目指すべきリーダーになるために足りない能力は何か、そのためにどういった育成プログラムを組むかを計画する。この時注意したいのが、OJTとOFFJTの両論で育成することだ。日々の仕事を通じて現場で育成していくOJTは中小企業の得意とするところだが、それだけでは激変していく市場に通用する人材の育成は難しい。外部の研修会や講演会などで、自社だけでは得られない最新の知識、技術、情報などを得るOFFJTも活用することが重要だ。
OJTとOFFJTを上手く活用していく計画ができれば、いよいよ実行に移る。教育対象者には、その目的を伝えておき、具体的な課題を理解させておく。本人の問題意識が低いと、育成プログラムの効果も半減してしまうので注意が必要だ。
育成プログラムを終えれば、すぐに現場での実践に移りがちだが、ここで忘れてはならないのが、育成プログラムのフィードバックを経営者が受けること。リーダーになるべき人材が、何かを学び、どのように成長したのか。経営者がこれを理解したうえで、今後リーダーとしていかに生かしていくか、につなげなくてはいけないからだ。
このフィードバックがあった後に、初めてリーダーとして現場に展開させる。以降は、常に成長過程を追いながら、さらにブラッシュアップさせていくことが重要だ。