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《上司と部下とのギャップ》

 日頃考課者トレーニングの始めには『自己評価と上司評価のギャップを埋めることを、まずは意識しましょう』と言います。今日は、日本生産性本部の意識調査から《上司と部下とのギャップ》を確認してみましょう。

 尚、この調査は2012年6月から日本生産性本部開催のセミナー等の受講者へのアンケート調査結果です。

①叱ることが『育成につながると思う』 上司89%
 叱られると『やる気をうしなう』 部下56%
②有益な情報の共有について『共有されている』 上司57%
     同上      『共有されている』 部下45%
③部下を褒めている  上司80%
 上司は褒めるほうだ 部下51%
④部下の仕事への取組姿勢『満足している』 上司37%
 積極的に仕事に取組んでいると思う    部下78%

 上司と部下のギャップが明確に見てとれると思います。

【もう一つ労働トラブルが起きやすい会社の共通した傾向】
①直属の上司が自らの業務に忙しく、部下とのコミュニケーション不足の会社
②ある程度の規模の会社で、経営者と社員のコミュニケーションが不十分の会社
③組織内に派閥ができている会社
④社員を育成するという姿勢に乏しく、人材を使い捨てにする傾向の会社
 
 最後にもう一つアンケートの結果より
※育成を『面倒だとは感じない』 上司73%いる一方で、育成に『自信がある』と答えた上司は41%にとどまった。
 

《スキル重視から、EQ重視へ》

 サービスには、二つあります。
※スキル(技術)
※EQ(感性・意識)

 この二つのうちどちらが大事かという話は、現場ではよく起こります。
 ベテランスタッフが『どんなに感性が高くても、スキルがなければ意味がない』 『大事なのは、まずスキルだ』と言った時、あなたはどう考えますか?
 ここで『たしかにそうだな』と言ってはいけません。
 ここで迷ってはダメです。
 サービスにおいて大事なことは、スキルよりも、感性・意識の高さです。
 社員研修での最も大事なポイントは、自分のスキルを変えるのではなく、自分の感性・意識を変えることです。
 そう言われても、やっぱりスキルが大事だと思うかもしれません。
 
 例えばあなたの仕事が介護サービスだとすると、あなたの仕事は、身体介護でも家事援助でもありません。
 『こころの介護であり、こころの援助』です。身体介護、家事援助は、あくまでもその手段にすぎません。
 手段と目的を間違えてはいけません。
 
 お客様へのサービスとは、お客様に何か技術的にしてあげることではありません。
 お客様のこころをハッピーにすることが目的です。

《人事考課のギャップ》

人事考課制度の運用では、自己評価と上司評価のギャップ、現状と期待人材像とのギャップを埋めていくといった作業は極めて重要になると考えますが、『ザ・ゴール』の著者 エリヤフ・ゴールドラットの本に参考になるような事が書いてありましたので、ご紹介します。

そもそもよくない関係、調和のない関係とはどのようなものだろうか。仲間意識や忠誠心といったものではなく、不平や不満にあふれている関係は当然、良好とは言えない。例えば、一方がほとんど全面的に相手に依存しているのに対し、その相手が他にいくつもの選択肢を有している場合など、両者の間に大きな不釣り合いがある時はそうなる場合が多い。
問題は、こうした状況の時、多くの場合、強者の方が相互の関係には特に問題などないとしてしまうことだ。自分の行為が相手にどのような敵意を抱かせているのか、強者には見えなくなってしまう。
では、どういう場合に、こうした両者の関係、調和とは程遠い、よくない関係が表に露呈してくるのだろうか。
それは、自らの利益のために、一方が相手に対し大きな変化を求めた時だ。
どういう時に、そうした大きな変化を要求するだろうか。
例えば、一方が自らの利益を増やすために必要な分析を行ったとしよう。そして分析が終わって、その変化によって利益が大きく増えるという結果が出たとしよう。すると、その変化は非常に重要な変化、根本的な変化で、それを実現するためには、相手側にも同じ変化を求めるべきだということになる。しかし、相手にそれを求めるのはそれほど簡単なことではない。私の経験では、変化が重要であればあるほど、根本的であればあるほど、相手が異議を唱える可能性が高くなる。そして、関係がもともとそれほど良好でなければ、相手の反応はおそらく否定的か、場合によっては非常に攻撃的にもなり得るのだ。

人事考課のフィードバック面接でギャップを埋める作業というのは、まさに相手に変化を求めることになりますね。面接の進め方によっては、博士が書いているように、『否定的』『攻撃的』になったりします。十分に注意をしながらの面談が必要になるものと思います。

《フィードバック》

 よく耳にするのは、人事考課制度でのフィードバック面接ではないでしょうか!今日は、フィードバックについて考えてみたいと思います。

 フィードバックとは、ちょうど鏡で自分の容姿を確かめて(自分に関する情報を得て)身支度(自己改革)をするのに似ています。鏡に映る自分がどんなにひどい顔をしていても、それをどれだけ素直に受け止めるかで自己改革の程度が変わってきます。人事考課におけるフィードバック面接では、上司を鏡に例えていることになるわけです。
 素直に受け止める、すなわち醜く映っている自分の姿を『自分のせい』として自分を責めたり、『人のせい、環境のせい』として人を非難することなしに『ありのまま』『あるがまま』に受けとめてみることです。
 例えば、フィードバックに対して相手を非難するといったことは、朝寝起きで非常に乱れた髪の毛をした人が、鏡に映ったとします。その幻影に対して、この鏡に映った自分を指しながら『あいつはなんだ、あんなヘンな格好をして』と非難していることと同じです。
 鏡は、単に自分のあるがままの姿を映しているだけなのですから、それを素直に情報として受け取って、その鏡を使って髪の毛を整えればいいのです。
 そういう、自分のありのままの姿を見つけて、非難もしない、自分を責めもしない、それが自分のありのままの姿を映しているんだということを、素直に見られる・・・・・・というのが、正しいフィードバックの受け方だと考えます。

《人事考課制度》

 今回は、人事考課に対する考え方をコンパクトに整理したみたいと思います。

 まずは、人事考課制度の目的ですが【活力ある組織を創ること】としたいと思います。活力ある組織が出来るということは最終的に【組織の永続】へと繋がります。ですから人事考課制度の運用は、組織が永続する為の一つの手法であるということを確認しておきます。

 次に人事考課の考課要素ですが、大きく三つ。
※目標評価
※知識・技術の評価
※仕事への取組姿勢
 この中で、特に大切だと考えているものに【チャレンジ目標の設定】があります。M・チクセントミハイが提唱する“フロー理論”の第一番目に【適度に挑戦的な目標】が挙げられています。ピーターの法則におていも目標設定の大切さが示されています。各人が挑戦的な目標をもって仕事に臨むことは、活力ある組織の成立には欠かせないものとなります。

 また、何をどのようにして考課するのか?につていは、自己評価と上司評価のギャップを発見して、どのようにしたらそのギャップが埋まるのかを確認していく作業になります。もう少し説明すると、期待されている人材像と現状の自分とを比較して期待人材像にどのようにして近づいていくのか、そのプロセスを上司と部下で一緒に考えていくということになります。
 
 人事考課制度を運用することで、結果的に順番(S・A・B・C・D)がつきますが、序列とか順番をつけることを目的に進めるものではないと考えます。

《人事考課と平均以上効果》

 『平均以上効果』という現象を聞いたことがあるでしょうか!
 たとえば、『あなたは、職場の人たちの中で、自分の協調性はどれくらいの位置にいると思いますか? 平均より上? それとも下?』
という調査をしたとします。
 こうした調査では内心で思っていることをハッキリ回答しない人もいると思います。しかし正直なところを聞き出せたとすれば、『自分は平均以上に協調性がある』と考えている人は、私たちの半数を大きく上回るはずです。七割を超えてもおかしくありません。こんなに多くの人が『平均以上』ということは、現実にはありえません。ここには、客観的情報を歪めてでも、自分自身を肯定的、積極的に認識しようとするシステムが働いています。
 社会心理学者トーマス・ギロピッチは、こう述べています。一般大衆の大半は、自分が平均以上に知能が高く、平均以上に公平であり、平均以下の偏見しかもたず、そして平均以上に自動車の運転がうまいと考えている、と。
 ギロピッチによれば、アメリカの高校生に行った調査では70%が自分の指導力を平均以上と考えており、平均以下と答えたのはわずか2%にすぎません。他人とうまくやっていく能力に至っては、ほとんどすべての高校生が自分は平均以上であると考えており、上位10%以内に入ると考えている高校生は60%もいたのです。大学教授を対象とした調査では、その94%が、自分が同僚よりも有能だと考えていました。
 これを人事考課との関係でみると、『自己評価』と『他者評価』とのギャップを埋めていくプロセスは、大変重要な作業であるということであり、『つもりの自分』を他者からのフィードバックによって、『はた目の自分』として客観的に捉える事は、人事考課制度の大切な一面であると考えます。
 自己評価が高めになる傾向にたいして、他人という鏡に映る自分を冷静に見つめることも時には必要かもしれません。

《人事考課について》

 人事考課制度の運用については日々悩みが多いことと思いますが、今日は人事考課制度について私なりの考え方を簡単に書いてみたいと思います。

 人事制度を提案するにあたり、給与体系の設計と人事考課システムの構築について勉強を始めた時は『絶対考課』『公正・公平な考課』から入りました。テキストで学ぶにあたり、書いてあることは正論でありとても良く理解できました。しかし、理論を現場に持ち込んで運用しようとすると理論のように上手くいきませんでした。今も日々『理論の世界と実務の世界の結びつくところ』を探しながら業務を進めています。

 正統派コンサルタントの方々から見ると違和感があるかもしれませんが、私が人事考課制度で大切にしている点はフィードバック面接です。その中でポイントをあげてみます。
 ① 自己評価と上司評価の違い(ギャップ)を確認すること。
   【良かった点・不足していた点・どこを改善したらA評価になるのか等々】
 ② 上司はアドバイスしようとするのではなく『ただ話を聴く』
   【日頃のストレスを吐き出させる】
 ③ 目標設定にあたっては、子供に少し大きめの服を着せる感覚で。
   【出来る目標の設定ではなくて、少し背伸びをした目標設定】

 以上の三点に意識を集中して面談に臨んで頂いております。
 絶対考課の呪縛に取りつかれてしまうと、ナカナカ前に進みません。

《それは妄想と錯覚》

 私たちは、相手を偏りのない目で見ているようで、実際には自分の思い込みで見ていることが多いです。

 そこで、今日は注意すべき人事考課エラーについて書きます。
【ハロー効果】 
※内 容  特に優れた点、劣った点または全体の印象に惑わされて、被考課者の個々の特性も同様に優れ、あるいは劣っていると考えること。
※対 策  ①一つ一つの特性を分離して考課すること。②イメージや印象によって考課することなく、被考課者の具体的行動を事実をとりあげること。③被考課者一人一人について、考課要素全体をつづけて考課するのではなく、考課要素一つ一つについて被考課者を変えて考課すること。

【寛大化傾向】
※内 容  考課が一般に甘くなる傾向をいう。
※対 策  ①部下に対して厳しく批判することをためらわないこと。②他の考課者の考課結果とのバランスを考慮しないこと。③成績を見分けることについての自己の考課能力を身につけ自信をもつこと。④考課の基準が低すぎないかを反省すること。

【厳格化傾向】
※内 容  考課が一般に辛くなる傾向をいう。
※対 策  寛大化傾向と表裏をなす。

【中心化傾向】
※内 容  考課が中央に集まってしまう傾向をいう。
※対 策  ①良い悪いと断定できる程度に、十分に被考課者についての具体的事実を知ること。②その他、寛大化傾向①~③に準ずる。

【論理的誤差】
※内 容  考課要素間に(例えば、積極性と責任感)一般的に密接な関係があると考える為、事実の要素へのあてはめを誤ることをいう。
※対 策  ①考課要素ごとに何を考課するのかの区別をはっきりと認識しておこなうこと。②制度上の取り決めをよく理解すること。

【対比誤差】
※内 容  自己の専門的事項について、基準が高く、非専門的事項については低くなる傾向をいう。(寛大化・厳格化傾向と深い関係がある)
※対 策  ①客観的事実をもとに、その事実の各特性を切離して考課すること。②自己を基準におかないこと。

【逆算化傾向】
※内 容  結果としての処遇、既存の社内序列を念頭に置き、総合結果から逆算して考課を行うことをいう。
※対 策  ①考課という部下の行動評定機能とその処遇とは、明確に区別して行うこと。②考課要素別の分析考課を経て、最終の総合考課を行う手順をふむこと。

《人事考課制度の目的》

 人事考課制度の狙い・目的について考えてみたいと思います。

 人事考課制度 ⇒ 何を考課するのか!※目標達成度※発揮能力※取組姿勢
    ↓
 何に使用するのか!
 ※昇給※昇格※昇進※賞与※配置※教育
    ↓
   目 的
 社員のレベルアップ
 社員のモラルアップ
 会社の業績アップ

 人事考課制度の狙い
     ↓
   目標 評価  ⇒ 努力の方向確認
   能力情意評価 ⇒ つもりの自分・はた目の自分の確認
            フィードバックによりギャップの修正

 頭の中にあるイメージを書き出してみました。

《人事考課制度の必要性》

 企業・組織では、人事考課の必要性について議論することが時々あるようですが、一言でいえば『よくやった人を評価しそれに報いる為』に、制度的に必要だと私は考えます。最近、医療・福祉の現場で人事考課制度が上手く運用出来なかったり、人事考課制度を止めたりといったことが起きているようです。
 現場の声『忙しい、時間がない、面倒くさい』に引きずられて、本来あるべきはずの人事考課制度を使用して部下・上司がお互いに向き合うことを避けている例が見られます。こういった組織には、人材育成といった視点が不足していますし、リーダーとしての意識に欠けた役職者も多いです。組織が永続し成長していくためには、『人材』にフォーカスして教育・育成に時間を使う必要性を強く感じています。
 スキルの教育、マナー研修、コミュニケーション研修等も大切な事だとは思いますが、まずは最低限の仕掛けとして『人事考課制度』を運用することがポイントです。そのためには、【トップはブレない】ことが重要になります。(社員の声を聞き過ぎても?)

 最後に
※この世で一番簡単なこと
 この世で三番目に簡単なのは・・・人を責めることである
 この世で二番目に簡単なのは・・・人のせいにすることである
 この世で一番簡単なのは  ・・・人のせいにしていることに気づかないことである

※この世で一番難しいこと
 この世で三番目に難しいのは・・・人を許すことである
 この世で二番目に難しいのは・・・ウソをつかないことである
 この世で一番難しいのは  ・・・ウソをついている自分に気づくことである