人事考課」カテゴリーアーカイブ

《能力ある者ができるのではない!》

 【保持能力】と【発揮能力】について考えてみたい。

 社内では、『そろそろ俺も課長にしてもらっていいだろう。当然その程度の能力はあるし、昇格基準も満たしているはずだ。』このような声が時々聞かれます。一方経営者からは『昇格だ・昇進だとこんな話をいくらしてもみても、船は進まないし、会社が良くなるはずがない。我々中小企業では、一人ひとりがどれだけの実績を上げたかが問題だ。皆の能力が上がり上へ上へと昇格していったが、船が沈んでしまったというのでは話にならない。』と言われる。
 全くその通りである。成果実績主義の成績評価の思想そのものであり、全く異存はない。ただし、制度的に階層があって上位階層への昇格の道が示されており、一つのリワードとして機能していることも事実である。
 【保持能力】能力があり技術資格や国家資格があることそれ自体が評価される。人の潜在能力は比べようがないし、比較もできない。協調性や積極性、責任感もそれ自体では意味がない。【発揮能力】それらの能力があったがために、どれだけの成果・実績を残したのかが問題なのだと思います。
 
 ①能力がある者      ⇒ 成果・実績を上げてくれるはずだ。
 ②成果・実績を上げた者 ⇒ 確かに実力を持っている。

 中小企業では、②の立場での成果実績中心の実力主義でいかざるを得ない。そして、《結果の平等ではなく、チャンスの平等》と唱えています。このような立場にたつ会社が、永続と成長を勝ち取るのだと考えます。

《人事考課・指定席と既得権》

 【評価はいつも同じです】
 社員サイドの会社批判や上司批判とは反対に、会社幹部に社員の評価を尋ねると『成績評価はいつも同じですよ。良い者はいつも良いし、ダメな者はいつもダメですよ』と言われる。多くの会社で同様で似たような話がよく出てくる。考課者訓練でお伺いしても、皆さん同様に感じているようだ。
 成績評価の弊害として、一番心配されるのがこれである。いつも、成績の良いAクラスの者のグループが固定され、これが『上司からの覚えが良い連中』と映り、一方でワンランク落ちるCクラスのグループが固定され、これが『覚えの悪い連中』と映っているとするならば、大変である。
 Aクラスの『上司の覚えの良い』方は、多少の失敗や成績ダウンがあったとしても、【今回もまたA評価をもらえるはずだ】と《既得権意識》を持つようになり、上司も評価を下げるとやる気をなくしたり、ヘタをして退社といったことも困るのでA評価を続けることになる。
 Cクラスの『覚えの悪い』方は、【どうせ少々頑張っても評価が変わるはずがない】と思い込み、半分あきらめ気味ですし、上司の方もつけにくいC・Dの評価は、今までの実績のあるメンバーのほうが心理的にもつけやすいので、徐々に《指定席》が固まってくる。
 成績評価にシード権はないですし、終身A会員もありません。毎期毎期ご破算でその期の実績に応じて評価してもらいたいし、実力主義給与体系での昇格に際しては、一度標準に戻してから改めて上位等級での基準がBかAか、あるいはCなのかを判断して頂きたい。
 入れ替えのない世界は面白くないし、入れ替わりのチャンスがあると思うから頑張れるのです。係長でAだった者が課長クラスに昇格してBになったとしても当たり前な話で、それでも上出来である。
 『実力給と業績年俸制のすすめ』より 

《人事は評価にはじまり、評価に終わる》Ⅶ

 人事評価についての書き込みも最終回になりました。第七回目です。

【昇格・昇進、教育訓練への活用】
 これまでも述べてきたように、成績評価は賞与や昇給だけでなく、昇格・昇進・配置・教育へも活用していただき、人材育成の基本システムとして活用することが、是非必要といえる。

①昇格・昇進への活用
 上位等級に上げる時の昇格条件として、これまでの下位等級で連続してAの成績をとることが要件とされるが、この場合でも、上位等級に上げたならば成績が平均より下がることが懸念される場合は、上位等級に上げることをしばらく見合わせたほうがよい。この場合、上位等級の等級適正なしと判断する。(現実的には、若い社員の昇格判断にもこの等級適正の判断を活用したほうが良いケースが多い)

②教育訓練への活用
 成績評価の結果を本人にフィードバックしている進んだ企業もあるが、まだまだ少数にすぎない。特に、C・Dクラスの社員へのフィードバックがなされていないのが実情である。
 C・Dクラスの者が、教育訓練ニーズが最も高いグループであり、連続してC・Dをとることがないよう、是非個別指導が必要である。C・Dクラスは放置せずレベルアップをはかることが、企業発展の為にも重要といえる。

③ОJTへの積極活用
 中堅・中小企業の場合、売上目標などの業績評価を毎月行うことも、有効なОJTの一環であり、業績志向の強い企業とか成長力のある企業には望ましい使い方だといえる。目標達成度評価シートには、社員の日々の『意欲と努力の結晶』である実績がストレートに評価できる仕組みがベターであり、教育効果も高まってくる。

《人事は評価にはじまり、評価に終わる》Ⅵ

 【評価制度は企業オリジナルで】

①実績評価の作成実施
 これまで、実績評価の評価項目として次のものが伝統的に使用されてきたが、中堅・中小企業では、実績評価が抽象的で違和感が大きいという会社が多い。

《実績評価項目例》

     実績評価・・・・・・・・・・ A 成 果・・・・・①仕事の正確性 ②仕事の速さ ③計画達成度                            

                 ・・・・・・・・・・ B 情 意・・・・・④規律性 ⑤積極性 ⑥協調性  ⑦責任性
                                                                                                                                                                                    
                                                                                         
 したがって、ここでは、実績評価をズバリ評価できるような、下記の4種類の業績評価項目を参考に供した。是非自社版として基準数値を作成したうえで活用いただきたい。
 そして、これらの業績が本人の自己評価で期末棚卸ができて、目標達成度が評価されることが最も望ましい。

 《業績評価項目例》

評価項目Ⅰ・・・・①売上達成度 ②回収高達成度 ③粗利益率・額 ④経費率 ⑤事務処理度
評価項目Ⅱ・・・・①売上達成度 ②粗利益率・額 ③商品回転率 ④交叉比率 ⑤事務処理度
評価項目Ⅲ・・・・①売上達成度 ②利益達成度 ③業務達成度 ④業務水準度 ⑤努力困難度
評価項目Ⅳ・・・・①目標達成度 ②量的実績 ③質的実績 ④チャレンジポイント ⑤業績貢献度

 次回に続く。

《人事は評価にはじまり、評価に終わる》Ⅴ

 【成績評価の留意事項】

①標準分布
 定時改定には、各人の等級レベルが適正に反映されることが必要であるが、そのためには、毎年二回行われる実績評価の結果と年一回行われる能力評価の結果を重要な資料として、昇給評価を作成し、それと直接リンクする形で行う。
 最終の昇給評語と昇給号数との関係、及び標準分布率は次の通りとする。

 昇給 評語    昇給 号数    標準分布
    S          7         5%
    A          6        20%
    B          5        55%
    C          4        15%
    D          3         5%

②指定席化・既得権化
 成績評価を行う場合、陥りやすい一番大きな問題点として、『指定席化』『既得権化』がある。これは、Aの成績をもらう人は固定しており、本人の実績にぶれがあってもAをもらうような場合をいう。一方、Cをいつももらう人は、かなり努力して実績を上げても中々認めてもらえない傾向が生じかねない。
 このような指定席化や既得権化をなくすには、昇格時にふり出し(平均のB)にもどすという原則運用が必要になる。

③集中化・分散化
 評価者による評価癖として、分散集中の誤差、甘辛の誤差を生じることがあるが、これらは、成績評価の評価基準書をできるだけ客観的なものにし、評価者によるバラつきをなくすことが重要。評価者への指導による甘辛の傾向を是正する努力よりも、評価基準そのものの客観化が合理的で、現実的であろう。

④本人へのフィードバック
 本人への評価結果のフィードバックは、特にC・Dをとった人に対する面談指導が優先されるべきで、これらの人に対するモラルアップ、改善指導が上司たる評価者の大切な任務となる。

 次回に続く。

《人事は評価にはじまり、評価に終わる》Ⅳ

 成績評価制度では、直接の管理監督者のみが評価者となる。それは、実際に部下に仕事を割り当て、管理・監督・指導を行い、結果について報告を受けて価値判断を加えながら評価を行うのは、直接の管理監督者であるからだ。もちろん、評価者の評価は信頼すべきだとしても、その評価結果に、評価癖が潜入する危険性があり、また、部門間の成績差も判断しがたいものがある。したがって、それらの評価誤差については、あとで別の上司が調整者として是正することになる。

※評価者・・・・・・・・評価者は、直接の管理監督者一人に限定される。間接の管理監督者や
            上級者は、評価者の評価方法について指導のみを行う。

※調整者・・・・・・・・通常、直上の間接監督者がなり、評価誤差(甘辛誤差・成績格差の誤差
            分散集中の誤差)を調整する。
【成績評価のステップ】

①等級レベルの確認(等級基準、職務レベルの確認)
 本人が社内の人事等級、資格等級のどのレベルに位置付けられているのかをまず確認し、その等級に求められる職務レベル、つまり職務の困難度、責任度もしくは専門性の高さを確認する。

②目標方針の確認
 その期の経営方針、部門方針とそのグループのアクションプランの再確認をする。

③職務行動の選択
 実績評価、能力評価それぞれで本人の職務上の実績と職務行動のみをとらえて評価する。職務外の行動は対象としない。本人の人柄や人間性を評価するものではない。いわんや若い女性のマスクに惑わされるようではもっての他である。
 ただし、それが流通サービス業での『顧客サービス』の評価になってくると、顧客満足度・顧客獲得度を大きくアップさせる要素となっているケースも多い。

④評価要素の選択
 例えば、売掛金の回収が問題になるのはどの評価要素で評価するのか。『ホーレンソー』が悪く迷惑をかけたのは、どの評価要素を適用するのかを選択する。各評価要素ごとに、その成績評価基準に照らし、順次評価していく。

⑤評価段階の選択
 各評価要素ごとに5・4・3・2・1の5段階の成績評価基準に照らして、評価段階を選択する。
   5 特に優秀   《抜 群》
   4 優れている  《優 秀》
   3 期待どおり  《良 好》
   2 不足あり    《努力要》
   1 支障あり        《問題有》

 次回に続く。

《人事は評価にはじまり、評価に終わる》Ⅲ

 引き続き『新・実力給と業績年俸制のすすめ』より人事評価制度について書きます。

 ここでは、中堅中小企業の評価制度をどうするかをテーマとして考えていきたい。今の今でも、中堅中小企業の人事スタッフや役員の中に、大きなジレンマが残っている。それは、『職務分析』をやらないと等級制度が組めないという考え方であり、また、その等級に応じた『能力評価』を『絶対評価』としてやらなければならないという『呪縛』に今でもとりつかれていることである。

 この『呪縛』を早く断ち切って頂きたいし、理論的な?『うしろめたさ』も一掃してもらいたい。新しい原理原則に立ってもらいたいところである。

 あまりにも環境変化が激しいし、取扱い商品も、生産工程も変更につぐ変更が重ねられ、その変化のスピードは増すばかりである。三年ひと昔が一年ひと昔の急激なスピードで社内外の環境が変化している。このような中で、中堅中小企業は、新しい実力主義の考え方に立つべきであろう。それは、成果実績中心の実力主義である。

①能力がある者は実績をあげるはずだ。
②成果実績をあげた者は実力があるはずだ。

 中堅中小企業では、②の考え方に立たないと生きていけない。『職務分析の研究』や『能力評価の研究』の成果は、大いに活用させてもらいながな、『成果実績中心主義』を最重視していきたい。その方法としては、年二回の実績評価を先行させ、その実績評価をふまえて、能力評価を行うやり方を大事にするということである。『分析的能力評価から成果実績主義による実力評価へ』というのが大原則である。極論をすれば、年二回の実績評価だけを行い、能力評価はスキップしてもいいくらいである。

 次回に続く。

《人事は評価にはじまり、評価に終わる》Ⅱ

 前回に引き続き『新・実力給と業績年俸制のすすめ』より人事評価制度について書きます。

 成績評価制度の展開にあたっては次のように進めたい。
①等級基準、等級定義の確認をする。
②等級基準書に部門別等級基準書を作成する。【具体的に各部門でどんな仕事ができることが必要かを、仕事名で表示】
③等級基準書及びその期の経営方針、部門方針を基準として評価する。
④まず実績評価を行い『客観的評価』に努める。『成果実績主義』で①~③の基準で評価する。
⑤次に、能力評価を行い、前二回の『実績評価』と『一年間の職務行動』【職務行動記録簿に残す】により、各評価要素ごとに『客観的評価』を行う。
⑥以上のやり方で、④の実績評価、⑤の能力評価のそれぞれに、評価者が合計評価点【素点合計】までをつける。

 以上により、『成果実績主義による客観的評価』を行うことができる。最終的な成績評語【S・A・B・C・D】は、部門間調整、全社調整の上で、標準分布を基準に決定する。
 『成績評価制度』は、『実力主義のカギ』であると同時に、『人材育成のしかけ』でもある。それは、経営方針や部門方針をやりきるところに、実績評価の基準があり、実績評価をふまえて、能力評価が存在するからである。

 実績評価のモノサシ
①個人別実行計画書【その期の重点目標の達成】
②目標達成度評価表【期末棚卸で自己評価】
③実績評価表【目標達成度中心】

 能力評価のモノサシ
①等級基準書【全社等級基準】
②部門別等級基準書【部門別等級基準】
③能力評価表【等級レベルに応じたチェック】

 次回に続きます。

《人事は評価にはじまり、評価に終わる》

 今回から何回かにわたって『新・実力給と業績年俸制のすすめ』からご案内をします。

 実力主義による人事管理を行う場合、『成績評価』が昇格・昇進・昇給・賞与等あらゆる処遇に大きく影響してくる。すなわち、人事制度を運用する場合、その実力主義的な運営が出来るかどうかの『実力主義のカギ』をにぎっているのが、この成績評価制度であるといえる。

 逆の表現をすれば、どのようにすぐれたいい人事制度や賃金制度といわれるものであっても、実力主義の思想で成績評価制度が運営されていなければ、全く絵に描いたモチにすぎなくなる。そこそこのシステムであれば、成績評価制度の運用次第でかなり実力主義化することが可能だともいえる。

 通常中堅中小の民間の会社では成績評価制度として、大きく分けると①実績評価【達成レベル】と、②能力評価【職務レベル】になり、次の用途に活用していくことになる。
実績評価 ⇒ 賞与・昇給・昇格・昇進・異動・教育
能力評価 ⇒     昇給・昇格・昇進・異動・教育

 成績評価制度が実力主義のカギだと述べてきたが、現実の中堅中小企業の制度改善のお手伝いを始めてみると、それまでの『理論』が通用しないことが多くのケースで実証されてきた。特に『能力評価』である。
 長年、『絶対評価』が正しく、『相対評価』は間違いだと教条主義的な思い込みがあった。現実論として、詳細な職務調査・職務分析の困難な中堅中小企業に向けて、絶対評価を説くことは、その評価の不完全性を自ら証明する自己矛盾に陥ることになる。特に、『待遇部長』や『名刺課長』の多い中堅中小企業で『絶対評価』を唱えることは無謀な論理であり、現実妥当な範囲で次のような展開が望ましい。

次回につづく。

《人事考課》よりハロー効果

 今日も引き続き人事考課エラーの《ハロー効果》について書いてみたいと思います。

 職務における日常の勤務ぶりや成績を科学的に評価しようという試みは、人事考課の問題として長年研究がおこなわれてきた。ここでは、人間が人間を評価する事態において発生してくる『ひずみ』の問題を考察しよう。

 評価のひずみの問題には、 続きを読む