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《指示待ち症候群》

 少し古いが、朝日新聞に掲載された65歳の女性からの投稿である。

 ざん新なコスチュームに身を包み、街角でたばこの新製品を配っていた若い娘さん。
 杖をついて歩いていた夫に手渡そうとして『失礼ですが、二十歳を過ぎていらっしゃいますか』
 夫は75歳です。

 この情景にはいくつかの見方があると思う。私が見たものは、若い彼女の『忠実』ぶりであった。新聞にも『マニュアル』という見出しがついていた。法に触れることを恐れて、その確認は厳しく指示されていたにちがいない。彼女は指示通り正確に動いているわけだ。
 最近、コンビニでも同じような事が行われているようです。

 もう一つ似たような投稿を紹介します。

 ピカピカの新車が納車された。さっそくガソリンスタンドへ給油に行ったら、元気のいい女の子が
『いらっしゃいませ! 満タンですか』 『ハイ』すると今度は
『洗車はいかがですか!』
 私がこれに見るものは、やはり彼女の忠実ぶり、他から言われたその通りに動くということである。
 言われるとその通りに動く人、与えられた条件の枠内でだけ動く人が多くなる一方で、それを越えて何とかしよう、そこから脱出せねばと動く人はがぜん少なくなってきているようだ。
   
 “人を人として” 藤田英夫著より

《リーダー像》

 いま求められるリーダー像とはいかなるものでしょうか?
 アメリカの行動心理学者リチャード・ファースンによれば『グループの力を引き出すこと』というのが、もっとも正しい見方だと思います。日本でも同様に『一人ひとりが優秀なだけではダメだ。チーム力、チームシナジーを出さないと』と言われて久しい。ファースンは、具体的な形について『リーダーシップは集団の成員の間に分散されており、各成員が、仕事の達人、道化役、母親的役割など、それぞれ重要な役割をかわるがわるに果たすのである』と表現している。
 つまり、これからのリーダーとは、持ち回りの学級委員のようなものだと考えた方がいいかもしれない。上司とは組織を維持し、部下たちの能力を引き出す役目なのです。こういう観点から考えないと、よい上司にはなれないのです。
 では、こういうリーダー役を果たすには、どんな上司になればいいのか。最初にやるのはチームを壊さないようにすることです。次にチームを活性化する。さらに各自のもつ能力を十分に発揮させるようにすることです。
 その具体的な手法は、おそらくチームの数だけあるのだと思います。見習うべき、確実なモデルというものはなく、ただ、どんなチームリーダーにも必要な能力は、部下から信頼されることだと考えます。
 上司になるための準備とは、あなたが職場で信頼される人間になること。そこから始める必要があるのだと思います。

《昇進したくない世代》

 近年現場の第一線の方々からよく耳にすることは、『部下を昇進させても喜ばないんです』といったようなことです。最近の若者は、リーダーになって組織を動かしてやろう、という意気込みに少し欠けているような気がしているのは自分だけでしょうか!
 読売新聞の人生案内に次のような記事が掲載されていました。

 30代の会社員女性。四月から昇進して、新しい職場に変わりました。仕事量が膨大に増えて、毎日自分の能力を超える責任の重い仕事を要求されて、つらくてたまりません。
 私は、キャリアを積むより、自分の力の範囲内でコツコツ仕事をする方が向いていると思っています。子どもも早くほしいので、以前の職場なら、働きながら子育てができそうだと思っていました。夫は優しく家事に協力もしてくれます。
 しかし、自分の意志とは裏腹に前の上司の推薦で今の業務に就くことになりました。続けていれば確実にキャリアアップできる職位です。でも、毎日遅くまで仕事をして、帰ったらクタクタ。体調も崩れ、感情が抑えられず夫の前でしばしば泣いてしまいます。
 前の上司も今の上司も私を育てようとしてくれ、何とか頑張って期待に応えなければならないという責任を感じています。
 こんな泣き言をいう私は甘いのでしょうか。つらいばかりで前向きになれません。

 男性だから、女性だからということではなくて、昇進させるタイミングとかサポート体制が難しくなってきているのだと思います。

《コミュニケーション》

 伊藤守著 『コミュニケーション100』より

 完了したコミュニケーションが私たちに生きる喜びをもたらし、
 未完了のコミュニケーションが私たちから生きる望みを奪う。
※【未完了】とは、投げたホールを受け取ってもらえないこと、または受け取らないこと。あるいは、受け取れないボールを投げつけられること、投げつけてしまうこと。そして、なぜなんだろうと、その答えをひとり、探し続けている状態。

 だから、コミュニケーションを始めたら、
 必ず、『完了』させなさい。
※完了とは、相手のメッセージを受け取ること、そして、受け取ったと相手に伝えること。
 
 聞きなさい。
※相手が話している間、相づちを打ちながら、内心、自分ならこう思うとか、次にこう言ってやろうとか考えているのは、聞くことではない。

 ほんとうに、聞きなさい。
※黙っているから聞いているわけではない。

 最後まで聞きなさい。
※ひょっとしたら、あなたに都合の悪いこと、あなたが自分のやり方を変えざるを得ないようなことを話し出すかもしれませんが。

 もっと話させなさい。
※それが、あなたの100万の励ましの言葉より、相手を勇気づけます。

《ホウ・レン・ソウ》

 『ホウ・レン・ソウ』という言葉は、お聞きになったことがあると思いますが、私は平成8年に人事の仕事をスタートした時に初めて耳にしました。実は、意味が解らず恥ずかしい経験をしたことを覚えています。
 念のために確認をしておきたいと思いますが、仕事の現場で使われる言葉で『報告・連絡・相談』のことです。もうすぐ新入社員が会社にやってきますね!今日は『ホウ・レン・ソウ』について書いてみたいと思います。

 職場における『ホウ・レン・ソウ』の重要さについては改めて説明する必要はないと思いますが、内容は仕事を頼まれたら途中経過や結果を“報告”し、外出先から“連絡”を入れ、困ったことがあれば“相談”することです。
 仕事を任されて、それをキチンとやることはもちろん大切です。ただ、任せる側は、それがどういう状況になっているかをとても心配しています。仕事に慣れていない人に任せた場合にはなおさらです。

 『ホウ・レン・ソウ』は、意味を伝える行為ですが、実はそれを通じて意識の共有も行っています。意識が共有でき、信頼関係が築けるようになると、意味を伝える回数が減っても相手は心配しなくなります。ですから、信頼関係が築けていない間の『ホウ・レン・ソウ』は特に大切なのです。
 弊社で使用している人事考課シートの考課要素『ホウ・レン・ソウ』の内容です。
①上司同僚部下・関係部署・顧客とのホウレンソウが出来ず、業務に支障あり。
②上司同僚部下・関係部署・顧客とのホウレンソウが不足し時々支障があった。
③上司同僚部下・関係部署・顧客とのホウレンソウが行われ、業務がスムーズ。
④上司同僚部下・関係部署・顧客とのホウレンソウが適切十分で、業務も円満。
⑤上司同僚部下・関係部署・顧客とのホウレンソウが的確で、業務に貢献した。

 5段階評価です。自己評価してみてください。

《管理者とリーダー》

 組織における管理者とリーダーの位置づけについては、どのように考えていますでしょうか!
 
 受講生の皆さんに『管理者とリーダーはどちらが上位でしょうかね?』と訊ねることがあります。理由も添えて答えて頂くのですが、実に様々な答えがあり、管理者が上位という回答や、逆にリーダーが上位だったりします。同じ組織の中で、言葉が共有されていない事に気づかされる瞬間だったりします。
 
 ここで私は、ジョエル・パーカーの『パラダイムの魔力』から説明をします。1990年代に書かれた本ですが、私が『リーダーとマネージャーの違い』に悩んでいた時に、スッキリできた内容なんです。
 ジョエル・パーカーはまず次のように表現しています。
 『管理はパラダイムの中でおこなうもの。パラダイムの間を導くのがリーダー』
 この文章を読んでスグに理解できる方は、素晴らしいです。私は、理解できるまでに何度か本を読み返しました。
 まずは、『パラダイム』の言葉の意味を確認したいのですが【枠組み・規制・規則・固定観念等】となります。仮にパラダイムを組織における規制として捉えた場合には、与えられた規制の中で組織をコントロールするのが《管理者》ということになります。一方、リーダーは規制に捉われることなく、もう少し加えると【環境の変化に対応して規制をどんどん変える者】と言えると思います。
 今、外部環境の変化スピードが速くなっています。リーダーシップが問われている時代だと感じています。
 
 管理者とリーダーは、どちらが上位であるか!というよりも、それぞれに役割と使命があるのでしょうね、
 

《譲り合い》

 アメリカの社会心理学者、ロバート・チャルデ―ニ氏の記事からで、『承諾』についてです。

 道を歩いていると、年のころ11・12歳の少年が私に近づいてきました。その少年は自分の名を名乗ると、自分は今度の土曜の晩に開かれる恒例のボーイスカウト・サーカスのチケットを売っているのだと言いました。1枚5ドルでチケットを何枚か買ってほしいと言うのです。土曜の晩をボーイスカウトと一緒に過ごすなどというのはまっぴらですから、私は断りました。するとその少年が言いました。『そうですか。じゃあ、チケットを買わないんだったら、チョコバーを買ってくれませんか。一本たったの1ドルなんです』。私は、二本買ったのですが、注目に値することが起きたことにすぐ気がつきました。
 なにせ、次のような事実があるのですから・・・・・。
① 私はチョコバーが好きではない。
② お金はとても好きである。
③ 私は二本のチョコバーを手にしてそこに立っている。
④ 少年は私の二ドルを持って立ち去った。

 興味深いですね。少年と教授との間に何が起きたんでしょうか。
 是非考えてみてください。

《事を大きく》

 ハインリッヒの法則のなかで、『ロジックツリー構築のプロセス』を次のように書き込みました。
① 一覧・一望・・・・・事実をしっかり見る。
② プロセス再現・・・・プロセスを再現し、見える化する。
③ 現場調査・・・・・・改めてその場に立ち、手に触れる。
④ 事を大きく・・・・・些細な事を、おおごとにしてみる。
⑤ 変える・・・・・・・何でもよいから変えてみる。やってみる。

 今日はこの中の《事を大きく》に関連するような弁護士の手記を紹介します。

 『社員がパソコンを使って、オリーブオイルの輸入販売のアルバイトをしているらしい』長年の顧問先から相談があった。この社員が昼休み時間中にパソコンを開いて、オリーブオイルの写った画像をのぞいているのを、同僚の数人が見ていた。
 『仮にオリーブオイルの輸入販売をしたとして、昼休み中のアルバイトは問題があるのでしょうか?』というのが相談だった。
 一般的には、次のような助言がなされる。
① 同僚数名から、もっと具体的な証言を集めること。
② その上で、本人に事実を確認する。
③ 就業規則では社員のアルバイトは原則禁止しているが、昼休み時間中のことなので懲戒処分に出来るかどうかは微妙である。

 しかし、私が助言する場合は違う。《事を大きくの視点と考えます》
 同僚からの聞き取りだけでなく、念の為、次の三点セットの調査を指示する。
① 交際費をあらう。
② 出張費をあらう。
③ 社用のパソコンや携帯電話の使用歴をチェックする。
 これが不正調査の出発点である。出張報告書・交際費報告書に添付された領収書をあらうと、白紙の領収書に本人が金額を書き込む例がしばしば発見される。社用のパソコンを私的な娯楽に使っている例や、社用の携帯電話でゲームをしている例は枚挙にいとまがない。三点セットの調査は、その他の不正行為を推測するシグナルである。
 私は、目の前で起きている行為が『たんなる就業規則違反が否か』の視点ではなく、『この事件の根はもっと深い、他にも不正行為をやっているに違いない』と当たりをつける。
 調査の力点の違いにより、表れてくる事実は大幅に異なってくるものである。

 調査した結果、この社員には様々な不正行為が発覚した。
 大学時代の友人との飲食、仕事に関係ない業者との会食、不必要と思われる取引会社のゴルフ大会の出張費、女性同伴を疑われる海外出張等などである。

《ハインリッヒの法則》

 『ハインリッヒの法則』は御存知の方も多いと思いますが、アメリカの大手保険会社の部長だったH・W・ハインリッヒが1929年に発表した労働災害における経験則である。
 『一件の死亡、重傷等の重大災害が発生する背景に、29件のかすり傷程度の軽微な事故があり、その背後にはヒヤリとしたりハットしたりした300件の潜在的事故(無償災害)がある』という。
 だから、『ヒヤリハット』に気づき、事前に対策を講ずれば、ほとんどの事故は予防できるわけである。小さなシグナルを読みとれば、将来の大事を読むことができるし、大半の失敗や事故、トラブルは防げるだろう。
 医療・介護の現場でも同様のことが起きています。研修では、ロジックツリーなどの考え方に基づいて事故対策をみんなで話し合ったりしますが、ポイントをまとめると次のようになります。

 ロジックツリー構築のプロセス
① 一覧・一望・・・・事実をしっかり見る。
② プロセス再現・・・プロセスを再現し、見える化する。
③ 現場調査・・・・・改めてその場に立ち、手に触れる。
④ 事を大きく・・・・些細な事を、おおごとにしてみる。
⑤ 変える・・・・・・何でもよいから変えてみる。やってみる。

 あえて付け加えると、この作業を当事者だけでなく皆でやってみる。

《指示待ち症候群》

 『指示待ち人材』と言う言葉を耳にした事はないでしょうか!一般的に組織において6・7割は『指示待ち人材』ではないか、とおっしゃる方もいます。
 指示待ち人材の特徴としては、一つは言葉のとおり『言われないと動かない、動けない』『言われたら動く、その通りに動く』もう一つの特徴は、『答え待ち』自分で考えないことでしょうか。
 以前朝日新聞に掲載された投書を二つ紹介します。

 ざん新なコスチュームに身を包み、街角でたばこの新製品を配っていた若い娘さん。杖をついて歩いていた夫に手渡そうとして『失礼ですが、二十歳を過ぎてらっしゃいますか・・・・・』  夫は75歳です。

 待ちに待ったピカピカの新車が来た。さっそくガソリンスタンドへ給油に行ったら、元気のいい女の子が『いらっしゃいませ!満タンですか』ハイと答える。すると今度は『洗車はいかがですか・・・・・・』

 マニュアル社会の弊害でしょうか。