給与体系」カテゴリーアーカイブ

《賃金制度の構築》

 賃金制度構築のポイントは『属人給部分の廃止・縮小』です。属人給とは『成果や能力に関係のない、人の属性に関する要素で決まる賃金』のことです。具体的には、年齢給・年功給・家族手当・住宅手当等になります。また、学歴や男女の区別も今日では必要ではありません。

 これらの要素を極力廃止・縮小して、基本給部分は職務・職責の大きさで決まるように設計します。本給、昇格給、役職手当等でコントロールすることになりますが、貢献度に応じて賞与はポイント式を採用しダイナミックに差が出るようにします。
 
 以前から、成果型賃金か職能型賃金かというような議論がありますが、中小企業の場合には大企業の事例や人事制度の教科書に惑わされずに自社にとって最も有効な賃金制度をオーダーメイドで構築すればよろしいと思います。

 あえてもう一言付け加えれば、これから20年も30年も今構築した人事制度を使い続けるという会社はないでしょう。賃金制度は会社の変化に応じて刻々と変化するのです。ですから、どのようにも変化できるような柔軟な弾力性のある制度内容にしておくことのほうが大切です。

《ベアの原資を管理職へ》

 興味深い記事を読みましたので、ご案内したいと思います。

 私も、三月に入って2社ほど昇給・ベアに関しての相談を受けました。
 確かに、消費税の増税が控えていますので望ましいことだとは思うのですが、あるブログの記事では『ベアの原資があれば、管理職に回すといった考えもあっていいのでは!』とありました。

 私も共感しました。

 今、現場では『役職』になりたくない現象が起きています。いわゆる『昇進』を嫌う社員です。
 彼らは『多少の手当てがついても、責任が重くなるのは嫌だ』と言います。
 裏を返せば、役職に対する手当てが少なすぎるのでしょう。金銭面だけではないのかもしれませんが、さしあたりベアの原資を役職手当の増額に充てるという考え方には賛成したいです。

 あるところでは、上位等級の本給をダウンしてその分を下位等級に回すといった逆の方法を選択しようとしていました。瞬間的に下位等級の社員は喜ぶかもしれませんが、組織運営の大切な社員(管理監督者)のモチベーションが落ちたり、離職に繋がったりしたら大変な事態です。

 魅力のある処遇・人事制度にしたいものです。

《定期昇給とベースアップ》

 三月に入って新聞は“ベア”の話題で賑わっています。安倍総理の要望もあってか、自動車業界をはじめとして2千円程度の金額が提示されました。

 久しぶりの“ベア”ということもありますので、定期昇給とベースアップについて整理しておきたいと思います。今更何を!とおっしゃる方も多いと思いますが、意外と知られてなかったりしますので説明しておきます。

 定期昇給については、通常年に一回一般的には四月に実施しているところが多いと思いますが、本給表に基づいて

S評価者 7号俸
A評価者 6号俸
B評価者 5号俸
C評価者 4号俸
D評価者 3号俸

 といったように人事考課の結果によって差をつけて昇給します。

 一方ベースアップは、弊社のシステムでは“加給”という表現で本給を底上げしていきますが、『定額加給』あるいは『定率加給』として社員に支給します。今回新聞紙上で取り上げているのは、この加給の部分になるわけです。

 従って、社員には 《定期昇給》+《加給・ペア》が増額されて支給されるということになります。

《基本給連動型賞与》

 古くから日本では賞与の支給に際して、(基本給×○ヵ月)といった計算式で支給されるケースが多いですね。おそらく年功給的な考え方が根付いている影響だと思いますし、未だに多くの組織で、基本給連動型の賞与が見受けられます。
 
 仮に賞与を短期的な業績(決算単位)や人事考課(半期)に基づき支給されるものであるとするならば、成果を出している若手の社員の賞与がベテランの主任さんより多くなって然るべきと考えるのですが、基本給連動型賞与では通常はベテラン主任さんの基本給が高いですから、頑張った若手社員は追い越すことができません。こうしたおかしなことが発生してしまうのです。

 このような問題を回避する方法は非常にシンプルです。ただ、基本給との連動をやめることです。そのうえで、自社にとって理想と考える賞与の配分ルールを設定すればいいのです。
 
 弊社では、等級と個人の成績による(成績別配点表)ポイント式賞与を提案しております。一部基本給と連動させたり、部門業績を勘案したりとフレキシブルな対応が可能です。賞与を計算する際に基本給と連動させなければならない理由は何一つありません。むしろ実際の貢献度と一致しない基本給と連動させる方が弊害が多いのです。

《賃金の昇給カーブ》

 縦軸に月額の基準内賃金を表示し、横軸に年齢をとって給与の軌跡を表示したものを『賃金の昇給カーブ』等と表現されていますが、カーブの角度によって賃金水準の高低が見えてきたりします。

 このカーブは右肩上がりのカーブを描くことになりますが、従前は50代前半にピークがくるように設計をしていました。出世とは別に勤続年数に応じてある程度は本給が昇給しつづける、いわゆる年功給の賃金体系でした。
 ところが現在は、35歳以降の昇給を据え置き、賃金カーブのピークを引き下げるといった傾向がリーマンショック以降顕著になっていますが、アベノミクスの経済効果によって少しでも賃金カーブのピークが上昇することを期待しています。

 賃金カーブの説明をもう少しすると、人事考課の結果が5段階評価で《5》の場合にはピークを50歳に、《4》の場合には45歳に、《3》の場合には35歳に、といったように成績別にカーブをコントロールすることになります。
 
 今、職能給から職務給へとシフトしていくような気配を感じています。

《給与体系のデザイン》

 最近の人事の話題は、『高年齢者の雇用の問題』と『同一労働・同一賃金』でしょうか!
 今日は、『同一労働・同一賃金』の問題について給与体系の制度設計の面から考えてみたいと思います。
 
 まずは、弊社で提案している給与体系は《単一型の職能給》を原型としていますが、特徴としては【7等級制による管理】【年齢加算給を排除】【複線型のコース別管理】【ポイント賞与】等々でしょうか!一言で表現すれば実力主義の給与体系であり、昇給・昇格・昇進・賞与・教育といった処遇が実力・実績によって決定されます。ここ10数年にわたり多少の制度改定を実施しながら、お客様に提案・運用をして頂いておりますが、比較的シンプルで分かりやすい制度であるとの評価を頂いております。

 基本的な考え方としては《頑張った人に報いる制度》《環境の変化にあわせてメンテナンス》《現給保障で移行》等々ですが、現在は『同一労働・同一賃金』との関連もあり、有期契約社員を正社員として受け入れる為の体系整備に頭を悩ませています。

《ポイント式賞与》

 弊社でもポイント式賞与・ポイント式退職金の提案をするようになって、十数年が経過しましたが、未だに賞与の支給基準に悩んでいる会社は意外と多いです。
 老舗繁盛店の社長もそうでした。なまじっか利益が出るものだから、支給額とその配分方法に困っています。特に、個別配分ルールがないものだから、対人比較で検討するということになります。(いわゆる相対評価)
 提案するポイント式賞与を運用するに当たっては二つの条件をクリア―して頂く必要がありますが、一つは人事考課制度による五段階評価の実施です。中には目標管理による目標評価だけで五段階評価を行っている会社もあります。今一つは、等級制度の構築ですが、弊社では7等級制を提案しています。
 人事考課制度と等級制度が完成していよいよポイント式賞与の運用に進んでいくわけですが、まずは【月収比例50%】【成績比例50%】からスタートして段階的に【成績比例100%】に持ち込みます。

 成績別配点表(例)をご案内します。

等級 代表職位   S  A  B  C  D
7  部 長   700 500 400 320 250
6  課 長   500 400 320 250 200
5  係 長   400 320 250 200 160
4  主 任   320 250 200 160 125
3  指導職   250 200 160 125 100
2  担当職   200 160 125 100 80
1  担当職   160 125 100 80 65

※ 賞与配分式
  各人の賞与額=(月収比例分+成績比例分)×出勤率
※ 成績比例分の計算方法
  1点単価=(賞与総額-月収比例分総額)÷Σ(等級別成績別人員×成績別配点数)

《賞与の予算》

 たまに、『賞与の支給基準がなくて困っているんですが』といった相談を受けることがあります。このような時には、《利益三分法》の考え方をご紹介します。ご存知の方々も多いと思いますが、確認をしておきましょう。

 仮に、利益が一億円計上されたら、①社員 ②会社 ③株主で 3,333万円ずつ三等分しましょう!という考え方ですね。分かりやすいし、納得感も高いと思います。ただ、お気づきになった方もいるように日本では利益に対して“税金”が徴収されます。仮に40%を税金で支払うことになると、税引後利益は6,000万円。これを三等分すると、それぞれ2,000万円(一億円に対して20%)ということになります。

 以上のように、計上された利益(結果)を分配するという考え方も宜しいとは思いますが、総額人件費管理、目標管理の立場からいけば、賞与を3,000万円支払うことを前提に、売上目標や粗利目標を設定し【達成に向けて全力投球する】ことが常道であると考えます。

《給与体系と人事考課制度》

 給与体系の設計と同時に人事考課制度を導入するケースが多いのですが、給与体系だけを整備し人事考課制度を導入しないというような場合には、組織にとってはどのようなメリット又はデメリットがあるのでしょうか?といったような質問を受けることがあります。一般的には、私が扱うケースでは給与体系をリニューアルすると同時に人事考課制度をメンテナンスしたり新たに導入するといったケースがほぼ100%になります。

 仮に人事考課制度を導入しない場合には、メリットとして考えられることは、人事考課に使う時間が節約できるということがあるかと思います。実際時々『一度人事考課制度を導入したが、現場社員から仕事が忙しくて出来ないという声が多くて止めました』と言ったことをお聞きすることがあります。このようなことも現実なのだと思います。

 一方デメリットとして考えられることは、人創り・組織創りという視点でみた場合には、能力・役割・目標といったようなことについて上司と部下が真剣に向き合って確認する場面が少なくなるということです。活力ある組織を創っていくためにはマイナスだと思います。もう一つは、頑張った人、成果を出した人が評価され、昇給・昇進・教育といった場面に適用されない、といったことがおきてきます。結果モチベーションがダウンし停滞気味の組織になってしまうといったことでしょうか!

 ミドル階層の方々には、人事考課制度の運用は労力を使うことになると思いますが、【永続する組織創り】には必要な事だと思います。未来の為に頑張ってほしいと思います。

《等級制度》

 給与・評価制度の基本となる人事制度区分を等級制度として整理してみました。

【年功職階制度】
※概 要
 ◆ 格付は、年齢・勤続年数・学歴など属人的要素による
 ◆ 長期雇用による従業員の熟練度アップにより、会社を右肩上がりに成長させることが前提条件

※効 果
 ◆ 毎年の昇給により安心感とやる気がもたらされるので、安定的な雇用を確保できる
 ◆ 厳密な仕事の評価は不要なので、マネジメントが大変らく
 ◆ 昇給や昇格が年齢・勤続基準であるため、賃金管理実務が簡単

【能力等級制度】
※概 要
 ◆ 格付は、職務遂行能力による
 ◆ 会社業績に結びつく職能要件を常に明示し、従業員の能力を正確に測定でき、かつ、実際に能力の向上が、会社の業績、会社の成長に結びつくことが前提

※効 果
 ◆ 能力開発主義=能力向上が昇格と賃金アップにつながるため、自己啓発・職務拡大の意欲が高まる
 ◆ 職務・役職による等級・賃金変動がないため、異動させやすい

【職務等級制度】
※概 要
 ◆ 格付は、綿密な調査に基づく職務価値による
 ◆ 職務価値を正確に測定でき、これに対する賃金相場を把握できること、定めた職務価値の高さと、会社への貢献度が連動することが前提
 ◆ 流動的な労働市場が確立されている環境に適合

※効 果
 ◆ 業績貢献度の高低に応じた人件費配分を行うため、会社業績と人件費が連動し、経営的に安定する

【責任等級制度】
※概 要
 ◆ 格付は、組織における役割責任で判定する
 ◆ 会社の経営戦略を、組織編成、人事配置、目標設定に具体化し、個々人の役割責任の遂行度合を評価して賃金を決める

※効 果
 ◆ 会社が顧客に提供しようとする価値を戦略的・組織的に追及し、その貢献度合と処遇が連動する
 ◆ 組織編成と実力に対応した効率的な人件費配分が行える
 ◆ 従業員の役割意識は高まり、自律性や向上心を喚起しやすい