《したい思考・すべき思考》

脳科学では、前頭前野が決定したことに認知的に従うことをトップダウンと呼びます。前頭前野でのコントロールによる「ダイエットすべき」、あるいは「リベラルであるべき」という思考は、トップダウンによるものです。

しかし、トップダウン的思考を行ったとき、実は後から振り返ると、意外に賢い選択がなされていなかった、ということも多いのです。よくありがちな例はダイエットとリバウンドの関係です。人は前頭前野でダイエットのメリットを思考します。容姿を良くしたい、健康に生きたい、とにかく目標を達成するクセをつけたいなど、自らのあるべき姿を設定して「ダイエットをするぞ」と決めます。すると、本来人間が持っている「食べたい」という本能、つまりボトムアップからの欲求をそれこそ365日、起きている間中、抑制していなければならなくなります。そしてダイエットのことばかりに脳のリソースを奪われ、他にやらなければならないことはたくさんあるのに気が回らなくなります。すると次第に面倒になり、あるいはあまりの面白みのなさ、つらさに嫌気が差してダイエットは主たる思考の座から追われ、リバウンドしてしまうというわけです。