《見える化とモチベーション》

 キャノンの事例から

 キャノンでは、生産革新によるカイゼン活動が日常活動の中に埋め込まれている。なかでも、複写機をはじめとする映像事務機を生産する茨木県の工場では、『一秒の視点』をスローガンに作業効率の徹底追及が続けられている。

 カイゼンを継続させるさせるための『月一改善』や『週一改善』『品質朝市』といった改善を実践する場が仕組みとして埋め込まれている。

 こうした仕組みに加えて、キャノンが重視しているのが『人づくり』である。

 カイゼンは現場の主体性・自律性がなければ定着しない。他の人から言われてやっているというカイゼンでは長続きしない。現場の社員自身が当事者意識を持ってカイゼンに取組むかどうかが大きな鍵となる。そのために、カイゼンの【効果の見える化】に熱心に取組んでいる。

 例えば、セル生産に取組んでいる社員は毎回、目標生産台数に到達した時刻を実績として記録する。それを前回の記録と比較して、どれだけ作業の効率が上がったかを認識し、その理由を解析する。

 すると、『部品の配置方法を変えてみたら、昨日より1分早くなった』などの成果が数値としてハッキリ『見える』ようになる。自らの知恵・創意工夫が具体的な効果として【見える化】されることで、社員のモチベーションはさらに喚起されることになるのです。

《経営計画の策定と実施運用》

 経営計画の策定と実施・運用までを各ステップごとに確認してみましょう!

※経営理念の作成・確認
 社員に対して経営者の思いを伝える
 自社の価値観や使命などを示す
※経営ビジョンの作成
 顧客に対して我社の思いを伝え共有できるものにする
 シンプルに表現する
※経営基本方針の策定
 経営理念・ビジョンに基づき、会社の方向性を示す
※短期事業計画の作成
 1年間の経営数値目標を設定する。
 月別の数値目標(予算)を設定する
※中長期事業計画の作成
 5年程度の数値目標を1年ずつ設定する
 10年後の目指すべき会社イメージを明確にする
※経営計画の書式化
 経営理念や個別方針などの『方針編』と
 事業計画などの『数値編』に分離してまとめる
※経営計画発表会
 顧客・金融機関を招待する
 社長が方針・数値目標を皆に発表する
※実施・運用
 事業計画書に実績を入れていく
 計画通り進んでいるかチェックする
 経営計画は毎年見直し修正する 

  

《見える化を考える》

 2000年に入ってから、“見える化”という言葉を使って企業の≪業務改善≫や≪問題解決≫への取組みがなされてきました。今日は、“見える化”について少し考えてみたいと思います。

 『見える化』という言葉は一見きわめて平易な言葉ですが、まずは・・・見える化とは・・・見たくなくても目に飛び込んできてしまう、そんな状態を作り出すことです。別な表現をすれば、【見せる化】と言うことでしょうか。企業活動においては、異常や問題が露見する前に、小さな変化や予兆をつかみ『見せる』ようにすることが、大事故・クレームを防ぐ大切なポイントになります。

 『見える化』は広い意味では情報共有であり、相手が『見よう』という意思を持っていることが前提になっています。

 ですから、『見える化』の基本は、相手の意思にかかわらず、さまざまな事実や問題が『目に飛び込んでくる』状態を作り出すことであり、【見える】から【見せる】に進化させなければならないのです。

 もう一つ重要な事は、『悪い情報』『後ろ向きの情報』が【見せる化】されることです。この種の情報は、本来『見せたくない』情報であり、放っておくと見えません。しかし、“悪さ”を早く発見・共有できれば、手遅れになる前に手を打つことができ、『見せる化』の価値も大きくなります。ですから、現場でおきている『悪い情報』を徹底的に見せるようにすることがポイントなのです。

《目的と目標は違う》

 『目的』と『目標』は違います。今日は、このことについて考えてみましょう。

 『目的』というのは最終的に行き着くところ、『目標』というのは、その為のプロセスや、目的達成の手段です。

 最近、目標管理の研修などで企業を訪問して感じることは、そこで働く社員たちの疲労感です。どうも、売上や利益などの数字を追うことが目的になっていて、会社の存在意義(本来の目的)を忘れていまっているようです。売上や利益も企業が存続していくためには大切な要素だとは思うのですが、そこの部分が強調されたノルマ設定による管理運用では、そこで働く人たちは本当にかわいそうです。

 良い商品やサービスを提供して、お客様に喜んで頂くことが会社としての一義的な存在意義《目的》です。さらに、それを通じて働く人や株主などの関わる人たちを幸せにするのも目的です。

 『単に儲ければいい』と勘違いすると、利益が目的などと言う人が出てきてしまうのです。でも、そのような企業は長続きしないと思います。

 今一度、我社の《目的》をじっくり考えてみるのもいいのではないでしょうか!

《五〇〇件目の投稿になりました》

 今日は、中・高校生の投稿を御案内します。

【苦手な人と話し成長】

 クラスメートの悪口を言ったとき、母は『良かったね、その人に出会えて!』と言った。皮肉だろうと思ったが、続く言葉に驚いた。

 『社会にはいろんな人がいて、出会えたことで修行を積める。あなたを成長させてくれる先生だね!』

 苦手と感じる人にも積極的に話しかけてみた。すると、その人の長所が見えてきて、良い人と感じることも多くなった。嫌いな人が減り、世界が広くなった気がする。

 高校生 米村麻耶子 (熊本市)

【席替えの楽しみ】

 席替えの日は、どこの席がいいか、などと想像してドキドキします。席を替えることがきっかけで、あまり話すことがなかった人と仲良くなったり、今まで見えなかったところが見えたりもします。

 席替えのような小さな出来事にも、いろいろな意味があるのだと思います。すべてのことに意味があり、何かの役に立っているのだと思います。落ち込んだ時、そう考えると楽になると思います。

 中学生 藤川晃多 (東京都町田市)

《人を動かす》

 D・カーネギーの著書“人を動かす”の中で【人を動かす秘訣】について、次のように書いています。

 人を動かす秘訣は、この世に、ただ一つしかない。この事実について気づている人は、はなはだ少ないように思われる。しかし、人を動かす秘訣は、間違いなく、一つしかないのである。すなわち、みずから動きたくなる気持ちを起こさせること・・・・・これが、秘訣だ。

 人事とか組織運営での大きなテーマの一つ【動機づけ】について、シンプルに表現しています。見事ですね!

 そこで皆さんは人を動かす場合にどのような手法を取られているのでしょうか?
 『仕事をしろ!さもないと大変な事になるぞ。』・・・・・恐怖・強制による動機づけ
 『勉強しなさい!終わったらおやつを与えるよ。』・・・・報酬・褒章・表彰による動機づけ
 
 以上は、現在も使用されている動機づけの方法だと思いますが、D・カーネギーの提案する秘訣とは、相反しています。では“みずから動きたくなる気持ち”とはどのようなことなのでしょうか。

 一つには、欲求五段階説を唱えた“マズロー”の【自己実現欲求】にヒントを見いだすことが出来ます。組織を運営していく上での【動機づけのポイント】は、“組織の実現したいこと”と“社員個人で実現したいこと”の合致点を模索する事だと思います。別な表現をすれば、組織目標と個人目標のすり合わせと合意を丁寧に実施することが重要になると考えています。

 目標管理制度を上手に運用する為にも、上司と部下のコミュニケーションがとても大切です。

《手抜き工事に揺れる》

 読売新聞 “編集手帳”より

 黒沢明監督が『用心棒』を撮影しているとき、米国の婦人が五人ほど見学に訪れた。やがて全員が真っ青になり、うち一人は気絶しかけた。血まみれの宿場町が舞台だが、体調不良の原因は“におい”であったという。

 黒沢監督がある対談で回想している。『セットが血だらけで、それににおいをつけたんですよ(笑)。赤い塗料に重油かなんかまぜてね、いやなにおいがするように。奥方たちが青くなってひっくり返りそうになるわけです。』

 臭気はカメラに写らない。見えない部分にも神経を使う。名作とはそのようにして生まれるらしい。

 『星とたんぽぽ』という金子みすずの詩がある。
 “見えぬけれどもあるんだよ・・・ 春のくるまでかくれてる  つよいその根は眼にみえぬ。”

 目に見える花以上に、目に見えない根を貴ぶのは映画に限らず、日本が誇るもの作りの文化である・・・いや、文化であった。目に見えないところで手を抜いた事件に揺れながら、今日は“文化の日”である。

 岩盤に打ち込む杭もいわば、“用心棒”地震に用心する棒である。でたらめで信用ならぬ用心棒の放った悪臭に、世間の顔面蒼白が続く。

 

《大人の発達障害》

 最近、耳にするようになった“アスペルガ―症候群”
 読売新聞で特集記事にしていましたのでご案内します。

≪30代になって病気と診断≫
 昭和大烏山病院に勤める堀越さん(40)は、幼いころから一人で遊ぶのが好きで、パズルやブロックに夢中になっていた。世間話ができず、聞くだけでも苦痛に感じることがある。サラリーマンは不向きと自覚し、研究者を目指していた。
 東京大学で物理学を専攻して大学院修士課程に進んだが、修士2年になった春に『君は研究者に向いていない。就職活動をしたほうがよい』と、指導教官に告げられ、以来自宅に引きこもるようになった。
 心配した教官の勧めで病院を受診。うつ病と診断され、抗うつ治療を始めたが意欲がわかず大学院を中退した。
 その後は、深夜から朝までインターネット漬けか、趣味のピアノに没頭した。
 30代の半ば頃に、インターネットで知った発達障害が、自分の症状と共通しているように思えた。
 堀越さんは2008年に昭和大烏山病院でアスペルガ―症候群と診断される。
 アスペルガ―症候群は、脳機能の偏りから引き起こされる『発達障害』の一つで、人との交流や意思疎通などに困難を抱える。子どもの頃に発病するが、見過ごされることも多い。
 堀越さんの主治医で、同病院の院長 岩波明さんは『大人になり発達障害と分かっても諦めず、適切な治療を受け、他人にどう対処していくかを学べば、社会復帰の道につながる』と強調する。

 ある資料によると、100人に0.5人の割合で存在するといわれています。これから始まる“ストレスチェック”とあわせて対応していかなければならない課題です。

《過剰サービス》

 最近、とある福祉法人で研修を実施した際に参加していた職員の方がひとつのデータを示してくれました。

 そのデータというのは“ディサービスでの利用者の入浴時間を調査”したものでした。そもそも“入浴時間を調査”してみようという動機は、日常業務の多忙さからだったのですが、従前は“人手が足りない” “時間が無い” “スキル不足”といった『言い訳』に終始して【じゃあ、どうしたら良いか】といった対策まで進んでいなかったのです。ところが、最近では色んな改善目標が具体的な行動計画として出でくるようになり私としては嬉しく感じています。

 データを拝見すると、利用者一人ひとりの入浴時間が二ヶ月間調査されており、1回当たりの入浴時間から平均入浴時間までが一覧できるようになっていました。素人の私が見ても分かる優れた表でした。その結果≪可視化≫出来たことは、Aさんは平均20分・Bさんは平均55分・Cさんは平均30分というように、今まではただなんとなく感覚的に感じていたことが、ハッキリデータとして確認できたということです。

 別の視点から見てみれば、個別ニーズの把握と個別対応が大切と福祉の業界内で叫ばれて久しいのですが、上記のケースにもあるように私の率直な感じとして、今介護サービスが《過剰サービス》に陥っているのではないのか!ということなのです。一般企業のように、時間の長い利用者については料金が高くなるようなシステムであれば納得もしますが、介護保険制度の中では基本的に一定額です。

 人・時・生産性という視点からも、介護サービスのあり様について考えてみる時期かもしれませんね。

《信玄流人間洞察Ⅱ》

 前回は武田信玄流の人間分析について書きましたが、引き続き対応策について紹介したいと思います。

※人の話をうわの空で聞いている者
 そのまま放っておけば、良い部下も持てないし、また意見する者も出ない。一生懸命に尽くしてもそれに応えてくれないし、また意見をしても身にしみて聞かない。従ってこういう者に対しては、面と向かって直言するような者を脇につけることが必要だ。そうすれば、本人も自分の欠点に気づき、みずから改め、ひとかどの武士に育つはずだ。
※うつむいて人の話を身にしみて聞く者
 そのまま放っておいても立派な武士に育つ。
※うなずいたり、ニコニコしながら話を聞く者
 将来外交の仕事に向いている。調略の責務を与えれば、必ず成功するに違いない。ただ、仕事に成功するとすぐにいい気になる欠点がある。すると、権威高くなって、人に憎まれる可能性があるのでこのへんは注意が必要だ。
※途中で席を立つ者
 臆病か、あるいは心にやましいところがあるものだから、育てる者はその者が素直に、欠点をみずから告白して、気が楽になるようにしてやらなければならない。こういう者に対しては、責めるより温かく包んでやることが必要だ。

 長所に目を向けて、人を活かそうとしている姿勢が受け取れます。