《自尊心(自信)について》

 “根拠のない自信” 茂木健一郎氏の基調講演より・読売新聞の記事

 人はいつか死ぬので、ふつうは一日でも長く生きしたいし、大切な家族や友人に生きてほしいと願う。だが、悲しいことに自ら命を絶つ選択をする人が増え、大きな問題になっている。
 
 人間の脳は、『根拠のない自信』を持っている。楽観的であることは、人間の生きる力でもある。自殺は『心の病気』と言われるが、その心を作り出す脳の状態を変えられたら、いくらでも前向きに生きることができるのではないか。
 
 この『根拠のない自信』を支えるのが『安全基地』だと言われる。親が子供を温かく見守るような絆こそが大事だ。お互いが相手のことを思う絆があれば、人は死を選ぶことはないだろう。
 
 人は嬉しいことがあると、中脳からドーパミンという物質を出す。そして最近の研究でわかっているのは、他人のために何かすると脳は喜ぶということだ。利他主義が人間を支える。人はいろいろ悩みや不安を抱えているから、みんながお互いに相手の役に立つことを考えるのは、とてもいい社会なのだ。
 
 そうは言っても苦しい時がある。その時、助けになるのはユーモアのセンス。苦しみ、つらさも笑いに変えることができたら、マイナスがプラスに変わる。これが人間の脳の素晴らしい力だ。自分の苦しいところを笑いに変えることで人は救われる。