《アドバイスしようとしない》

 話を聞くときに絶対やってはいけないこと。そのひとつが「アドバイス」をすることや、「良いこと」を言おうとすることです。読者の方の多くは「?」と思うかもしれません。相手の話を聞くとき、とくに悩みごとや相談ごとの場合は、こちらも相手の役に立ちたいと思うからです。しかし、これが話を聞くときに陥りがちな大きな間違いだと言えるのです。

 相手の話を聞くときに大事なことは、結果的に相手が「私の話を聞いてもらえた」「私の考えていることを理解してもらえた」と思ってもらうことです。そのためにはとにかく「丁寧に聞く」という態度をとり続けることが大切なのです。アドバイスや相手の役に立ちそうな情報というのは、相手からしてみれば「余計なこと」になってしまいます。

 この「アドバイスをしない」、相手にとって役に立ちそうな「良いことを言わない」という心構えは恋人、夫婦間のコミュニケーションやビジネス上のコミュニケーションにおいても、もちろん役に立ちます。プロカウンセラーの日々の仕事でもこのような態度・姿勢で相手の話を聞きます。

 ただ、プロカウンセラーでも勘違いをしている方は多いようです。カウンセリングをした相手から「今後は先生の言われたようにしてみます」と言われたとしましょう。カウンセラーは「いい仕事ができた!」と満足できるかもしれません。しかし、このとき、実はカウンセリングは失敗しているのです。

 「先生の言われたようにしてみます」と相手が言ったのは、実は自分に対応してくれたカウンセラーに気を遣っているだけです。おそらく、心の中では「二度とこの先生には話したくない」と思っていることでしょう。なぜなら、「言われたようにしてみます」とは、「余計な」アドバイスをしてしまっている証拠だからです。相談ごとへの不用意な「アドバイス」や「良い意見」には注意しましょう。