「あの~、実は最近仕事にちゃんと打ちこめていないんです。何か仕事が手に付かなくて・・・。やっぱり自分はできない人間なんでしょうか?」
会社の後輩や部下からこんな悩みを相談されたら、あなたならどう答えますか?後輩・部下のために力になってあげたくて、あの手この手で励まそうとするのではないでしょうか。「お前なら大丈夫だ」「目の前の仕事をがんばっていれば、結果はついてくる」などいろいろな励ましの言葉があります。ですが、このような「励ましの言葉」を言えば言うほど、相手の本音や素直な気持ちを聞くことができなくなってしまうのです。
なぜならこのような相談をしてくる人の多くは、何もそこで具体的なアドバイスをしてほしいわけではないからです。「自分の話を聞いてほしい」「このつらい気持ちをわかってほしい」と、それだけを思って相談してきているのです。励ましの言葉は逆にプレッシャーにしかなりません。
では、どのような態度で接していけばいいのでしょうか。また、相談内容の言葉の裏に隠れた本音や、自身でも気付いていない心の声をどうすれば知ることができるのでしょうか。ここで必要なことは、相手が訴えているつらい気持ち、苦しい気分に寄り添いながら、丁寧に相手の言葉を聞くという態度で接することです。
カウンセリングの専門用語では、この聞く姿勢のことを「傾聴」(けいちょう)と呼びます。相手のことを無条件に受け入れて、相手の心に寄り添いながら共感して話を聞くという方法です。そこには励ましの言葉は必要ありません。ただ、相手の気持ちや言葉に共感して耳を傾けるという、その姿勢だけでいいのです。
話を聞くときには、普段からこの「傾聴」の姿勢を意識するようにしましょう。それができれば、言葉の奥に隠れた本質的な悩みに話し手自らが気づき、あなたにより多くのことを語ってくれることでしょう。