“ゆがめられた目標管理”・・・一倉定 著から
某社の重役をしている人が、かつて製造部長であった時のことである。工場見学でその工場を訪れたところ、工場のどこに行っても『本年度の目標、工数三割削減・・・製造部長』という目標がかかげてあった。
工場を見学し終わってから、私は目標について質問した。
それに対して、彼は次のように答えた。
『工数三割削減に、科学的根拠は何もない。ただ、今年度中にどうしても工数を三割しなければ、我が社は激烈な競争に打ち勝って生き残ることは出来ない、と製造部長の私が判断したからだ。それ以外に何もない。そして課長たちには、各自どのようにしたらこの目標が達成できるかを考えさせ、計画書を提出させた。私の役目は、この計画書をチェックすることだ。とはいっても、これは容易なことではない。工数削減は今年初めて行うのではない。会社創立以来10年間毎年行っているのだ。その上さらに三割を削減せよというのだ。一通りや二通りの努力で出来る相談ではない。だから各課長は、あれは出来ない、これもダメです、その理由はコレコレです、といってくる。
しかし、私は絶対にこれに耳を貸さない。一つ一つ理由をきけば、もっともな理由があることは初めからわかっている。もっともな理由をきけば“私も人間だ、出来ないことは仕方がない”といいたくなる。またそうすれば“話のわかる部長だ”といわれることもよく知っている。
しかし、私が話のわかる部長になってしまったなら、会社はどうなるのだ。工数三割削減どころか、一割も出来ないだろう。私は、鬼製造部長になるよりほかに道がないのだ。そして、あくまでも部下に目標達成を要求しなければならないのだ』
※目標達成の意味・目標必達の強い決意が伝わってきます。