《返報性の法則》

 人から何か頂いたり、何かしてもらったときに、お返しをしたくなる心理状態を『返報性の法則』といいます。

 心理学者デニス・リーガンによって行われた『返報性』の実験を紹介します。

 美術鑑賞という名目の実験で参加者が集められて美術鑑賞はスタートしました。被験者とリーガン博士の助手であるジョーと二人での鑑賞です。何組かの実験を被験者だけをかえて行いました。ただし、一つだけ違いがありました。美術鑑賞の途中に休憩があります。その休憩の合間にジョーがコカ・コーラを買ってきて『君の分も買ってきたよ』と、手渡しするケースと、何もしないケースの違いです。それ以外ジョーは全く同じように振舞いました。

 さて、美術鑑賞が終わった後で、ジョーは被験者に対して、新車が当たるくじ付きチケットを一枚25セントで売っているけど、最も多くチケットを売れば、50ドルの賞金がもらえるので、何枚でもいいので協力してほしい、とお願いをしました。

 この実験の主要なテーマは、2つの条件下で、被験者がジョーから買ったチケットの枚数でした。もちろん、ジョーが事前にコカ・コーラという恩恵を与えていた被験者の方が多くのチケットを買ってくれたことは言うまでもありません。

 返報性の法則がどのように働くかを示す簡単な例ですが、このルールが持つ重要な特徴もあらわしています。注意したいことは、この法則は、人に対するマイナスの態度にも作用することです。相手に不愛想な態度をとられたら、自分も不愛想な態度をとったりしてしまいます。

 ギブ&テイクというよりも、ギブ&ギブという心がけが大切なのかもしれません。